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2024年05月19日
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別に意味も理由もないしましてや含むものなんてあるはずもない
2011年03月24日
絵を描きたいとあの人は言った。
描けば良いのにと私は思う。
けれど、あの人は自分には描けないのだと寂しそうに笑うから、少しはあの人の心の慰めになるのかしらと、私が絵を描いてみたのだ。
するとあの人はますます寂しそうに笑って「君、とても上手だね」という。
どうしてだろう?
あの人のそんな顔が見たかったわけではないのに。
だから私はますます絵を描く。
描けないというあの人の代わりに。
こんな絵を描きたいんだというあの人の代わりに。
あの人はどんどん悲しそうな顔になって、しまいには消えてしまった。
私は私の絵の前に立ち尽くす。
あの人が描くはずだった私の絵の前で途方に暮れる。
これを仕上げたらあの人はまたあらわれてくれるだろうか。
あるいは、こんなもの引き破いてしまえばいいのだろうか。
色のたっぷりと染み込んだ筆と、鈍い白銀色のパレットナイフ。
二つを交互に見つめながら、私はどちらを手にしたものかずっと悩んでいる。
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